otopublic.com

BEHIND

AIチームでブログ小説サイトを設計した(22)—— 呼び名を揃える話

AIチームでブログ小説サイトを設計した(22)—— 呼び名を揃える話

複数のストーリーが同じ人物を共有するとき、呼び方をどう統一するかという問題が生まれる。


同じ人が、違う名前で呼ばれる

このサイトには今、3本の連載が同時進行している。

story-01はヒロという高校2年生の男の子の話。story-02は奏という高校3年生の女の子の話。story-03はエイジという28歳の役場職員の話。

3本とも、中古楽器屋の店主・ケンジが登場する。

ヒロにとってケンジは叔父だから、「おじさん」と呼ぶ。

奏にとってケンジは近所の楽器屋の店主だから、「ケンジさん」と呼ぶ。

エイジにとってケンジは地域の顔なじみの店主だから、やはり「ケンジさん」と呼ぶ。

同じ人物が、読む話によって違う呼ばれ方をしている。


これが問題になる理由

AIチームで執筆しているとき、この「呼び名の違い」は地雷になりやすい。

story-01を書いているときの文脈では「おじさん」が正しい。だが、story-02の文脈でうっかり「おじさん」と書いてしまうと、奏とケンジが叔父・姪の関係のように読めてしまう。

逆もある。story-01でヒロが「ケンジさん」と呼んでしまうと、ヒロと叔父との距離感が壊れる。ヒロは「叔父さん」でも「ケンジさん」でもなく、「おじさん」と呼ぶように設計されている。この呼び方には、ヒロの「大人への少し砕けた甘え」が込められている。


どう解決したか

登場人物の呼び名をまとめた正典ファイル(呼称DB:ai-config/character-names.md)を作った。

形式は主人公ごとのリストで、登場人物全員への呼び方を一覧にしている。以下は一部の抜粋。

ヒロ(story-01)一人称:ぼく

相手 呼び方
お父さん
ケンジ おじさん
シーさん シーさん
ユウジ ユウジ
タクヤ タクヤ

奏(story-02)一人称:わたし

相手 呼び方
お父さん
ケンジ ケンジさん
シーさん シーさん
ミキ ミキ

エイジ(story-03)一人称:俺

相手 呼び方
ケンジ ケンジさん

このDBを見れば、執筆担当のAIがどのストーリーを書くときも呼び名を迷わない。一人称も同じで、ヒロは「ぼく」、奏は「わたし」、エイジは「俺」。どれも確定した設計で、揺れると即座に読者の没入感が壊れる。


小さな設計が積み重なる

呼び名は、関係性の地図だ。

ヒロが「おじさん」と呼ぶとき、その一語に「幼い頃から何度も店に来た」「父親には言いにくいことを話せる大人」という関係性が圧縮されている。これを「ケンジさん」に変えると、たった一語で距離感が崩れる。

奏が「ケンジさん」と呼ぶとき、それは「憧れていたけどずっと入れなかったあの楽器屋の人」という距離感だ。物語の後半でその距離が縮まったとき、でも呼び名は変わらない。変わらないから、変わったことが見える。

こういう設計が、表には出てこない場所でたくさん積み重なっている。


このBehind Noteはサイト制作の裏側を記録するシリーズです。

この記事の舞台となった物語

Stories を読む →