AIチームでブログ小説サイトを設計した(1)―― 構想とチーム編成
音楽をテーマにしたブログ小説サイト「otopublic(音パブリック)」を立ち上げようとしている。
ふつうのブログと違うのは、書き手が一人の人間ではなく、複数のAIで組んだ「編集部」だということだ。
このサイトでは、まだ一文字も小説を書いていない。
だがその前に、けっこう長い「設計の会議」があった。この記事は、その会議の記録だ。
何を作ろうとしているのか、そして なぜその形に落ち着いたのか を残しておきたい。
なぜ「AIチーム」なのか
最初の発想はシンプルだった。
「同じ時間軸の上で、複数の物語が走っていて、ときどき交差する音楽小説を書きたい」。
ギタリストの話、リスナーの話、機材好きの話。立場の違う登場人物たちが、同じ街、同じライブハウス、
同じ一曲のまわりですれ違う。読者は入口を選べる。自分に近いキャラから入って、いつのまにか
別の物語と地続きだったことに気づく——そういう体験を作りたかった。
これを一人で全部書くと、どうしても語り口が均一になる。
そこで、物語ごとに違うAIを「作家」として立てることにした。
– ある物語は、内面描写の得意なAIに
– ある物語は、会話のテンポがいいAIに
– ある物語は、調べ物と質感づくりが得意なAIに
文体の癖がそれぞれ違うこと自体を、群像劇の強みに変えてしまおう、という賭けだ。
役割を「会社」に見立てた
ただ、作家が3人いて勝手に書くと、世界観もタイムラインもすぐ破綻する。
そこで役割を会社のように整理した。
– 人間(プロデューサー) —— 最終決定権。公開していいかどうかを最後に判断する人。
– CTO —— 全体を統括し、物語同士の整合性を見て、交差シーンを設計し、品質をレビューする。
– 作家たち —— それぞれの物語の初稿を書く。文体は意図的に揃えない。
– システム担当 —— サイトやデータ構造、自動化のしくみを作る裏方。
おもしろいのは、ある一人(一体)の働き者が 作家とシステム担当の二役を兼ねていることだ。
書くAIであり、作るAIでもある。これも実験の一部になった。
ここで大事にしたのは、「自動で全部書かせる」ことではなく、
AIと壁打ちしながら人間が決めていくという姿勢だ。最後の責任は人間が持つ。
設計はAI同士の「壁打ち」で決まった
この設計、実は人間が一人で決めたものではない。
たたき台を一つのAIが出し、それを別のAIがレビューし、さらに別のAIが穴を指摘する——
という往復を何度も回して固めていった。会議の議事録がそのまま設計図になっていった感覚に近い。
その過程で、最初の案から明確に変わった「効いた判断」がいくつかある。
判断1:「公開してはいけない情報」を初日から隔離する
物語に現実の手ざわりを混ぜたい。実在の出来事やモノを、フィクションの中にそっと織り込む。
ただしそのまま出すと、実在の場所や人が特定できてしまう危険がある。
そこで、世界観を管理するノート群の中に 「非公開専用の置き場」 を最初から作った。
実在の参照はそこにだけ置き、本文に出すときは必ず——
実在の要素を3つ以上に分解して、別々のジャンル・地域の要素と掛け合わせて合成する
というルールを通す。元が一つに特定できない状態にしてから物語に入れる。
さらに公開前のチェックリストも用意して、毎回それを通してから出すことにした。
このあたりは「あとで付ければいい」と思いがちだが、
自動化を進めるほど、最初に壁を作っておかないと事故る。だから初日に入れた。
判断2:分類は「タグ」ではなく専用のしくみで持つ
「このキャラが出てくる話の一覧」「このモチーフが響く回」——
こういう切り口で後から物語をたどれるようにしたい。
ふつうのブログのカテゴリやタグでやると、雑記記事とすぐ混ざってしまう。
そこで登場人物・場所・モチーフ・楽器・どの連載か、を それぞれ専用の分類軸として持たせた。
データの持ち方を最初に決めておくと、あとで「あの人が出る話だけ並べる」が一行で書ける。
判断3:制作の裏側そのものを、第2のコンテンツにする
そして——いまあなたが読んでいるこの記事が、その判断の産物だ。
otopublic には2本の柱がある。
ひとつは音楽小説そのもの。もうひとつが、この「AI制作の裏側」を見せる記事群だ。
小説はまだ無くても、作っている過程は今日から書ける。
「AIチームで小説を作るって、実際どうやるの?」に興味がある人が先に集まってくれれば、
小説が始まるころには、もう読者がいる。そういう狙いだ。
ただしルールは決めてある。小説本文には制作の説明を一切混ぜない。
AIの話はこの裏側コーナーでだけする。物語は、あくまで物語として読んでほしいから。
なぜこの組み合わせなのか
「なぜこの道具とこの体制なのか」を整理しておきたい。
なぜ1つのAIに任せなかったのか。
1つのAIだけに書かせると、全キャラの語り口が均一になる——群像劇の最大の弱点だ。
Claude Codeは内省・心理描写が長い文脈でも崩れない。Codex-Writerは会話テンポが速く構造的だ。Geminiはウェブの情報を直接引けるリサーチ力がある。
それぞれの「癖」を文体の多様性として使うという逆転の発想がこの体制の核心だ。
ただしバラバラに書かせれば世界観はすぐ破綻する——だから「CTO」という整合役が必要になった。
なぜObsidianを選んだのか。
決め手は「ローカルのマークダウンファイルである」という一点だ。
AIはファイルを直接読み書きできる。クラウドサービスならAPIの追加連携が必要だが、Obsidianならそれがない。Gitがそのまま使えるので「昨日のキャラ設定に戻りたい」が git revert で済む。
AIが参照するノート群には、シンプルなテキストファイルが最も摩擦が少なかった。
なぜSuperpowersを入れたのか。
Claude Codeはデフォルトだと毎回「まず探索してから」という曖昧な進め方になりやすい。Superpowersというスキルプラグインを入れると、「新機能の前にブレインストーミング」「バグ修正の前に体系的なデバッグ」「完了主張の前に検証コマンド実行」という構造化された行動パターンが強制される。
毎回スキルを読み込んで従うという「手順の強制」——CTOがいい加減な判断をしないために、このレールが必要だった。
なぜ人間が「プロデューサー」の役割を持ち続けるのか。
「この描写は実在の誰かを傷つけないか」「このタイトルは本当にこの物語に合っているか」——こういう問いには、AIは文脈の外側から判断できない。
最終的な公開の判断は人間が持つ。これは制約ではなく、このプロジェクトの質の保証として設計した。
AIが提案し、人間が決める。その往復が、どちらかだけより良いものを生む、という仮説のもとで動いている。
何ができたか
会議のあと、最初の土台を実際に組んだ。
– 世界観を管理するノート群 —— 登場人物・場所・モチーフ・タイムライン・交差の記録、
そして前述の非公開置き場と公開前チェックリスト。物語を書き始める前の「設定の器」。
– サイト側のデータ構造 —— 小説の各話・連載・この裏側記事、という3種類の入れ物と、
それらを横断する分類軸。将来の自動化に備えた接続点も仕込んである。
派手な見た目はまだない。デザインもこれからだ。
でも「複数のAIで、矛盾なく、安全に物語を増やしていける器」は組み上がった。
ここまでで分かったこと
一人で書くより、明らかに手数は増える。
たたき台を作り、別の視点でレビューし、穴を埋め、また回す。会議は長い。
それでも、違う癖を持つ何人かで一つの世界を組むという体験は、
一人の執筆では出てこない発見をくれた。意見が割れた場所こそ、あとで効く設計になった。
次は、器を実際にどう組んだかを話す。
Obsidian と WordPress でデータをどんな形に入れたか——設計が地面に降りてくる話だ。
この記事はotopublicの制作過程を記録した「裏側」記事です。
物語本文ではありません。具体的な未公開設定や、実在モデルが特定できる情報、
AIへの指示文そのものは、方針により伏せています。