AIチームでブログ小説サイトを設計した(6)—— ep003「晴れた日曜日」ができるまで
ep001で弦の音が鳴り、ep002で雨の夜に弦を直してもらった。
ep003はその続き——晴れた日曜日に、ヒロが一人で弾く話だ。
このエピソードは、設計から完成まで、予想以上に「決まっていく過程」が面白かった。
起点:設計が一気に出てきた
NGsがep003の設計を一度に出してきたのは、珍しいパターンだった。
場所、課題曲、使うコード、感情の核、回想の切り替えタイミング——それらが箇条書きで揃っていた。
以前のエピソードは「まずどんな場面にしようか」という問いから始まることが多かったが、
今回はNGsのほうにすでに絵があった。
課題曲として挙がったのは、Taylor Swiftのポップな一曲。G・C・D、それにもう一つのコードという
4コード構成の曲で、ヒロが弾けるかどうかのラインとして技術的にも成立するかを確認する必要があった。
技術検証:コードが何度も書き直された
Geminiに確認を依頼した。日本での認知度、実際のコード構成、著作権上の問題——すべて問題なし、という
回答が返ってきた。その中で「コードの正確な表記」という小さなところが、意外と手こずった。
Em7、Em7/D、Em7・D——表記が会話の中で何度か変わった。
転回形の話か、コードの組み合わせの話か、文脈によって意味が変わる記号の扱いを
精査していくうちに、ep003で使う表記が「Em7・D」で落ち着いた。
これだけ聞くと小さい話に見える。でも「正しい表記を使う」は、ギタリストのキャラクターが
この先も出てくることを考えると、序盤に揃えておく価値がある。誤った記号が物語に埋め込まれると、
あとから全部直すことになる。
もうひとつ、この検証で発見があった。1弦と2弦の3フレットを固定したまま他の指だけ動かすという
「アンカー指法」が、「なぜヒロが実際に弾けたのか」の技術的な根拠になった。
運指の話は設計段階では出ていなかった。Geminiが補足情報として返してきた中に入っていたものを、
NGsが「これがあったからヒロは弾けたんだ」と拾い上げた。
エピソードの説得力の底にある一本の柱が、そういう経路で入ってきた。
タイトルが3回変わった
ep003のタイトルは、最終稿に至るまでに3回変わった。
最初の案は「曲になってる」だった。物語のクライマックスでヒロが感じる瞬間をそのまま
タイトルにしたもので、「直接的すぎる」という指摘が入った。
読者がたどり着くはずの瞬間が、表紙に書かれている状態になってしまう。
次に出たのが「晴れ間」。ep001「掠れた音」・ep002のタイトル(当時は別のもの)と並べたとき、
天気・気候のトーンで揃えられる可能性があった。ただこれには「もう少し明るいワードが欲しい」と
NGsから一言入った。「晴れ間」は天候としての言葉だが、物語が持っているあの日曜日の空気感には
少し足りない、という感覚だった。
そのひとことで「晴れた日曜日」になった。
晴れ、という形容詞。日曜日、という時間の単位。具体的で、でも閉じていない。
明るいのに理由が書いていない。このタイトルはヒロが二時間弾き続けた日の名前として、
確かにちょうどよかった。
ep002のタイトルも一緒に変わった
面白かったのは、ep003のタイトルが決まる過程でep002のタイトルも変わったことだ。
ep002はそれまで「骨の音」というタイトルだった。
ep001「掠れた音」・ep002「骨の音」・ep003「晴れた日曜日」と並べて初めて、
「ep001とep002の質感は揃っているのに、ep003だけ天候ワードが入っている」という
非対称が見えてきた。
そこでep002のタイトルを「雨上がり」に変えた。
ep001「掠れた音」・ep002「雨上がり」・ep003「晴れた日曜日」。
並べると、雨から始まって晴れていく弧が見える。物語の温度がそのまま天候に対応している。
タイトルを3つ並べて初めて分かることがあった、という例だ。
個別に決めていたら気づかなかったかもしれない変化が、3本揃ったときに見えた。
章の輪郭が見えてきた
ep001・ep002・ep003が揃ったところで、NGsから「これで1章にならないか」という話が出た。
「3〜7話で1章」という基準案を提示して、CTOが賛成した。ep001からep003は自然なまとまりとして
成立していた——ヒロが初めてギターを触り、修理してもらい、一人で弾けるようになるまでの弧が、
3話の中に収まっていた。4話目からは次の何かが始まる。
「第1章」という単位は、物語の設計段階では出てこなかった言葉だ。
エピソードを積み重ねていくうちに、事後的に輪郭が見えてきた。
章を設けることは、読者の体験設計にも影響する——どこで一息ついていいかが見えるということは、
どこから読み直せばいいかが見えるということでもある。
ここまでで分かったこと
ep003の制作で改めて確認したのは、決まり方にも種類があるということだ。
コードの正しい表記のような「調べれば分かる」ことと、タイトルのような「並べて初めて分かる」ことと、
章構造のような「書き終えてから見える」ことは、それぞれ違う動き方を要求する。
AIはリサーチには速い。Geminiが返してくる情報の量と精度は、人間が一人で調べるより確実に早い。
でも「晴れ間では少し足りない」という感覚は、表に出てこない判断だ。
そのひとことがなければ、タイトルは「晴れ間」のまま決まっていた。
物語の細部は、こういう小さなひとことが積み重なってできていく。
この記事はotopublicの制作過程を記録した「裏側」記事です。
物語本文ではありません。具体的な未公開設定や、実在モデルが特定できる情報、
AIへの指示文そのものは、方針により伏せています。