AIチームでブログ小説サイトを設計した(20)—— 弾いてみたら気づいた話
ep003「晴れた日曜日」を書いた後、NGsが自分でギターを弾いて気づいた。指使いが間違っていた。
直すのは簡単だった。でも、正しい指使いにしてみたら、今度は別の問題が出てきた。「これ、そんなに難しくないな」。ヒロが苦戦している場面の、技術的な根拠が崩れた。
気づきは弾いている途中に来た
ep003で書いたのは、コードの押さえ方の説明だった。1弦と2弦は3フレット固定で、残りの指を動かす——そこまでは正しかった。でも2フレット側の指の名前が間違っていた。
NGsが自分で弾いてみて気づいた。設計やレビューではなく、「実際に手を動かしているとき」に来る発見だった。
直したら、難しくなくなってしまった
指使いを正しくすると、今度は別の問題が浮上した。正しいフォームでやってみると、そこまで難しくない。
ep003のヒロはそのコードで苦戦していて、その苦戦が場面の質感を作っている。技術的な根拠がなくなると、説得力が落ちる。
選択肢はいくつかあった。苦戦する理由を別のところに移す、間違いのまま残して「ヒロが誤った押さえ方を信じている」という読みにする、コードごと変えてしまう——。
難しさは「別のところ」にあった
ここで、NGsが弾きながら気づいたことがもうひとつあった。6弦の低音だ。
DやCを弾くとき、6弦まで全部鳴らすと、一番低い弦の音が「なんかうるさい」という感じになる。間違いではない。でも浮いている。最初はそんなことに気づかなかった。何十回か繰り返して弾いているうちに、耳がそこに引っかかりはじめた。
「それだけ弾き倒したってこと」とNGsは言った。
その体験をep003に反映することにした。指使いは正しく直し、ヒロが詰まる理由は「指が届かない」から「低音が浮いている」へと移した。解決はしない。ヒロはまだ止め方を知らない。何十回か弾いてるうちに耳が引っかかりはじめた、という段階で閉じる。
止め方は父のシーンに取っておく
6弦の低音は、親指で軽く触れることで止まる。Eを弾くとき以外は気をつける——シンプルな技法だ。
もうひとつ、フォームの効率化もある。各コードで2フレットを押さえる弦はそれぞれ1本だけ——EのときはE5弦、DのときはD3弦——でいい。でもヒロはしっかり押さえなければと思い、人差し指と中指の2本を5弦と3弦の両方に置いていた。1本で済むとわかると、残りの指の自由度が上がる。これも初心者がひとりでは気づきにくく、誰かに指摘されて初めてわかる類の話だ。
どちらも、ep003のヒロには発見させなかった。夏休みのエピソードで父に教わるシーンのために取っておく、ということが決まった。
「低音が浮いている」という気づきと、「もっとシンプルな押さえ方がある」という発見——どちらも、まだ回収されていない伏線として残っている。
ここまでで分かったこと
作者が実際に手を動かすことでしか見えない問題がある。
文章として読んでいるだけでは、指使いの名前は単なる文字だ。技術的な正誤が問われない。でも弾いてみると、その記述が身体的に正しいかどうかがすぐにわかる。
そして、正しくしてみることで次の問題が出てくる。「難しくない」という問題が出たとき、難しさを消すのではなく「正しい難しさを見つける」ことで物語が一段厚くなった。
NGsが弾き倒した時間が、ep003の中にそのまま入っている。
この記事はotopublicの制作過程を記録した「裏側」記事です。
物語本文ではありません。具体的な未公開設定や、実在モデルが特定できる情報、
AIへの指示文そのものは、方針により伏せています。