AIチームでブログ小説サイトを設計した(31)—— 体が先に動く、を検出できるようにした話
030 の終わりに「調査してからスキルを作る」と書いた。その続きだ。
調査の核心:「体が先に動く」
NGsが調査結果を持ってきたのは、いくつかのQ&Aの形だった。カーネマンのSystem 1/2、ダマシオのソマティックマーカー仮説、防衛機制——それぞれについて、小説の文章描写に当てはめるとどんな差が生まれるか、具体的な例文付きで調べてあった。
中心にあったのは「体が先に動く」という概念だった。
AIは「考えてから行動するキャラクター」を書く。論理的に、適切に。一方、人間は「体が先に動いて、後から理由を探す」——これがカーネマンの言うSystem 1だ。ダマシオのソマティックマーカー仮説では、意思決定は感情的な身体反応(胃の収縮、手が止まる、喉が渇く)に先行される。理由は後からついてくる。
防衛機制は「言葉と行動の矛盾」として現れる。「なんでもない」と言いながら視線を逸らす。嫌いだと言っているのに近づく。キャラクター自身も、なぜそうしたのか分かっていない。
これを読んで、030 の議論で決めた「3層」がより明確な検出基準を持てるようになった。
スキルの3層
骨格はこうなった。
1層は「単独視点の偏り」。AIは複数人の感情を均等に正しく書くが、キャラクターは自分の角度からしか見えない。2層は「場の引力」。複数人のシーンで誰が・何が場を支配しているか。POVキャラはその引力に引っ張られて、予定外の行動をする。3層は「無意識の動機」。「考えた」「判断した」が多すぎないか。「指が動いた」「気づいたら止まっていた」があるか。
各層を none / minor / critical で返す形にして、パイプライン上はGemini後・Gemma4前に置いた。
動かしてみた
既存エピソード4話——story-01 ep001、story-02 ep001・002、story-03 ep004——を対象にした。全部 none だった。
story-02 ep002「いつもの道」での一場面が特に鮮明だった。奏が楽器屋の前を通り、中に入る男の子を見かける場面。「気づいたときには、わたしの足が止まっていた。肩にかけた鞄が、慣性でトボッと体に当たって初めて、自分が立ち止まっていることに気づいた。」——体が先に止まり、意識は遅れて鞄の衝撃で追いついてくる。スキルの設計根拠そのままの描写だった。
全話チェックはしない方針になった。承認済みのエピソードはNGsが読んで通している。このスキルは過去の話を採点するためではなく、新しい話を書くときに失敗を早く見つけるための道具として使う。
ここまでで分かったこと
チェックリストが機能する前に、作品はすでにその動き方をしていた。
スキルを作って既存話に当てたとき、全部クリーンだったことは、ある意味で想定内だった。NGsが承認してきた話には、すでにそういう書き方が入っていた。ただ、「なぜクリーンなのか」を言語化できるようになったことには意味がある。新しいエピソードを書くとき、あるいはレビューするとき、「体が先に動いているか」という問いが明確な検出軸になる。
この記事はotopublicの制作過程を記録した「裏側」記事です。
物語本文ではありません。具体的な未公開設定や、実在モデルが特定できる情報、
AIへの指示文そのものは、方針により伏せています。