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何回観ても

親友

親友
親友

何回観ても

暗くなったリビングで、画面の光だけが3人の顔を青白く照らしている。

エンドロールが流れ始め、同時にあのしゃがれた、けれどどこまでも伸びていく歌声がスピーカーから響いた。

私は膝の上で丸めていたティッシュを、そっとゴミ箱に落とす。横を見ると、お父さんはあからさまに鼻をすすり、お母さんは目元を指の腹でトントンと叩いていた。これで何度目だろう、この映画を観るのは。

「何回観てもやっぱりエアロスミスいいよなぁ」

お父さんがリモコンを操作して、音量を少しだけ上げる。テレビの光に、小さく揺れるお父さんの頭の影が映った。

「お父さん好きだもんね!」

お母さんがクッションを抱え直しながら笑う。赤くなった目を隠す風でもない。

「カッコイイ曲だよね。わたしも好きだよ」

私もあぐらをかいた膝を抱えながら同意した。学校の友達とカラオケに行っても、この曲を歌う子はいない。そもそも誰も選曲画面で「Aerosmith」と検索しない。けれど、我が家のリビングでは、この声が流れるとみんな少しだけ背筋が伸びる。

「カナ、この映画の主役の女の子、知ってるだろ?」

お父さんが楽しそうに、少しだけ声を弾ませた。うんちくが始まる合図だ。

「リヴ・タイラーでしょ」

「そう。あのボーカルのスティーヴン・タイラーの娘なんだよ。つまりさ、あの切ない大サビは、父親が自分の娘の出演する映画のために歌ってるわけ。そう思って聴くと、また深みが違うだろ?」

お父さんは満足げに、ソファの背もたれに体を預けた。お母さんが「へえ、知らなかった」と、たぶん三回目くらいの相槌を打つ。

画面では白い文字が下から上へと流れ続けている。歪んだギターの音が、リビングの空気を小さく震わせていた。ただ綺麗に整った音じゃない。ザラザラしていて、熱くて、聴いているだけで体の奥がジリジリするような音。

「バンドって良いよね。なんか……盛り上がるっていうか」

呟いた言葉は、エンドロールのギターソロに半分くらい掻き消された。

「カナも何かやってみたら?」

お父さんが、思いついたように私を見た。

「ほら、駅の裏の、坂を登る手前にあるだろ。古い楽器屋。ケンジさんの店。あそこ、まだやってるからさ。近いんだし、一回覗いてみたら?」

お母さんがお茶を淹れに立ち上がる。

私はテレビ画面を見つめたまま、爪先でトントンとフローリングを叩いた。あの掠れたボーカルの、一番高い声が響く。

「……うーん、どうだろ」

膝の上のスウェットの裾を、きゅっと握り直す。

お父さんはそれ以上追及することなく、「やっぱり一作目は超えられないな」とか何とか、別の映画の話を始めようとしていた。

エンドロールが終わり、急に静かになったテレビの画面に、ぼんやりと自分の顔が映る。

でも、耳の奥にはまだ、あの歪んだギターの残響が、耳鳴りのように小さく残っていた。

物語の制作過程

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