そういうことだから
「母さんに話したら、小遣いじゃ足りないでしょって言って援助してくれるって」
ユウジが言った。
「うちも親父がギター持ってたんだって。探してくれたんだけど、従兄弟にあげたの忘れてたらしくて。だから買ってくれるって」
タクヤが続けた。
「じゃあ一緒に始められるじゃん!」
「……二人とも、本当に始めるの?」
思わず聞いてしまった。
「そうっか〜」
窓の外に夏の空があった。ぼくはそっちを見た。
「あ、そういえばさ」とタクヤが言った。「ミキさんにも始めるって言っちゃったんだよな!」
「お前……動機が不純!」
ユウジが呆れた声を出した。タクヤは否定しなかった。
コンコン、とドアがノックされた。
「ヒロ、いいか?」
お父さんだった。
「は〜い」
ドアが開いた。ユウジとタクヤが「こんにちはー」「お邪魔してまーす」とそろって言った。
「ケンジから聞いたぞ」とお父さんが言った。「みんなでギター始めるんだって?」
「うん。ユウジもタクヤも、買ってもらえることになったから。3人で」
「そっか。頑張れ。わからないことがあればいつでも聞いてこいよ。お友達も遠慮なく」
ユウジとタクヤが「ありがとうございます!」と言った。
ぼくは少し考えてから、口を開いた。
「夏休みだから……2人がギター買ったら、教えてほしいかなぁ」
「お!いいぞ!」
即答だった。ぼくは笑いを堪えた。
「土日なら大丈夫だから、買ったら声かけてくれ」
「わかった」
お父さんがドアを閉めて行った。
ぼくは自分がさっき言ったことを、もう一度頭の中で確かめた。
言ってしまったな、と思った。でもそれだけだった。
「そういうことだから!」
気づいたら言っていた。「2人とも、頑張ろう?」
「……ヒロ」
ユウジが少し戸惑ったような顔でぼくを見た。
「ようし!早く買いに行こうぜ!」
タクヤが立ち上がった。
部屋の中に夏の風が入ってきた気がした。