まだ8時前
電話が鳴ったとき、ぼくはまだ眠っていた。
「起きてる?」
タクヤだった。
「……何時」
「6時ちょっと前」
「早すぎ」
「ギターのこと考えてたら夜も眠れなくてさ、夏休みって暇だし」
「自業自得じゃん」
「そうなんだよなー」
電話を切って、もう一度目を閉じた。でも眠れなかった。
1時間半ちょっとして、3人ともぼくの部屋にいた。
「俺もアコギがいいのか?」
タクヤが床に座りながら言った。
「まぁ、ヒロのお父さんに教わるからな、アコギでいいんじゃないか?」
ユウジが答えた。
「エレキでもいいんじゃない?好きなのでいい気がするけど?」とぼくは言った。
ユウジが少し考えた。
「店に行ったらケンジさんに聞いてみようぜ?」
「そうだな!」
タクヤが大きくうなずいた。
「それにしても時間が早すぎじゃない?」
「眠れなかったし、早く動きたかったんだよ!」とタクヤが言った。
「だからって6時に電話するな」
「わるい!早く行動したかったからさ」
「二人とも早すぎ……まだ8時前だよ?おじさんのお店は10:30からだし」
タクヤが「えっ」という顔をした。
「……調べてこいよ」とユウジが静かに言った。少し間があって、「まじか」と続けた。
3人で笑った。
ぼくはギターを膝に乗せた。特に理由はなかった。
「弾いてみせてよ」とタクヤが言った。ユウジも少し前のめりになった。
Cコードを押さえて、鳴らした。GとD。指がすっと動くのが、なんか変な感じだった。最初はこんなじゃなかったから。
「上手くなった?」
「……そうかも。よくわかんないけど」
「俺も触っていい?」
ギターをタクヤに渡した。タクヤが弦を一本だけ弾いた。ぼよん、という音がした。
「ぼくも最初、こんな感じだったと思う」
「マジで?」
「うん」
タクヤがもう一度弦を弾いた。また同じ音。
「難しいな」
「はやく自分のが欲しい」とユウジが言った。
10時20分になって、3人は部屋を出た。
玄関でスニーカーを履いていたら、タクヤが「緊張してきた」と言った。
「この間行ったじゃん」とユウジが返した。
「あれは見るだけだったからさ」
「今日も見るだけだったらどうすんだよ」
「それはないって!」
ドアを開けた。外は夏だった。