来たか
タクヤからLINEが来たのは朝だった。
「一緒に来ない?」
それだけだった。
3人で坂を登った。
引き戸を開けると、おじさんはカウンターの中にいた。
「来たか」
それだけ言って、奥に引っ込んだ。
しばらくして、ギターを持って戻ってきた。
昨日調整台に置かれていたのと同じギターだった。でも何かが違って見えた。
おじさんがタクヤの前に置いた。
「弾いてみろ」
タクヤが受け取った。
しばらく、タクヤは黙っていた。
抱えたまま、弦を少し押さえて、開放弦を弾いた。音が出た。
もう一度弾いた。
「……いい」
それだけだった。
「そうか」おじさんが言った。「ミニアンプとシールドはここに入れてある」
紙袋をカウンターに置いた。
ユウジがおじさんに近づいた。
「あの」
「ん」
「昨日の話で、セミアコってバンジョーみたいな音も出せますか?」
「出せる音の幅は広いな。弾き方と弦次第でそういう音にも寄せられる」
ユウジは少し考えた。
「じゃあ、それにします」
「昨日の、茶色いやつか」
「はい」
おじさんが一度、ユウジを見た。
「今日持って帰るか?」
「……いいんですか」
「弦は昨日張ってある。さっさと持っていけ」
3人で店を出た。
タクヤは紙袋を右手に、ギターケースを左手に持っていた。ユウジはケースを肩に下げていた。
「重い?」ぼくは聞いた。
「全然」タクヤが言った。
「少し重い」ユウジが言った。「まあいいけど」
坂を下りながら、3人で歩いた。
駅に向かう途中で、タクヤが立ち止まった。
「サンキュな」
ぼくとユウジを交互に見た。
「……おじさんに言いな」
ユウジが言った。
「お前らにも、だよ」
夏の道は昨日と同じだった。でも3人の手の中にあるものが、昨日とは違った。