押さえ方教えて
ユウジがセミアコを抱えたまま、アンプのほうに目をやった。
「これ、鳴らせるのか」
「たぶん」とぼくは言った。おじさんがケーブルをつないでいってたから。
ユウジはVol.のつまみをゆっくり回した。少しだけ。弦を一本、なんとなく弾いた。
「ビョーン」
音が部屋に出た。
「おお!」
「なになに、どこで出るの?」タクヤが身を乗り出した。
「ここ。Vol.って書いてある。少しだけ回してみな?」
タクヤがアンプのつまみを触った。自分の弦を一本弾く。
「チャリーン」
「出たよ!すげー!」
ぼくはアコギを膝に乗せたまま聞いていた。
ビョーン。チャリーン。
ぼくのアコギとは全然違う音だった。同じギターなのに、なんか別の楽器みたいだった。
「ヒロ、押さえ方教えて!」
ユウジが言った。
「オレも!オレも!」タクヤが続いた。
ぼくはアコギを持ち直した。
「とりあえず、Cから」
「どれがC?」
「このかたち」
指を置いた。おじさんが最初に教えてくれた、1弦と2弦を固定する押さえ方。
弦を鳴らした。
ユウジが同じかたちにしようとした。弦がびびった。
「もう少し指、立てて」
「こう?」
「そう、そんな感じ」
鳴った。ちゃんと出た。
タクヤも真似した。こっちも、なんとか鳴った。
GへDへ動いた。それからEm7・Dに移る。
「1弦と2弦の3フレット、ずっと押さえとくんだよ。そこは固定」
「動かさないの?」
「それ以外を動かす感じ」
おじさんがぼくに教えてくれたことを、そのまま言葉にした。
2人は真似をしようとしていた。音は出たり出なかったりした。でも、形はだんだんそれっぽくなってきていた。
「なんか弾いてる感じ!」
タクヤが言った。
部屋の中で3つの音が混ざった。
アンプから出るセミアコとエレキの音。ぼくのアコギ。でこぼこしてたけど、音は出てた。
しばらく弾いていたら、いつのまにかCが重なった。
3人がちょうど同じタイミングで同じコードを鳴らしたのか、アンプの音とぼくのアコギの音が、一瞬だけ揃った。
3人で顔を見合わせた。
誰も何も言わなかった。
「……きれいな音だった」
ぼくは言った。
「うん」タクヤが頷いた。
「かっこいい!もう一回やってみようぜ?」ユウジが言った。
「うん!行くよ?1・2・3・4」
ぜんぜんそろわなかった。音がバラバラになった。
3人で顔を見合わせて、それから笑った。
「そりゃそうだ!まぐれだよなぁ」
タクヤが言った。
「まぁ、そうなんだよなぁ」ユウジが続いた。
「だから練習するんじゃない!」
ぼくは言った。
少し間があった。2人がぼくを見た。
「あっ、ごめん」
「そうだよな!練習しなきゃだよな!」ユウジが言った。
「そうだよ!そうだよ!」タクヤも続いた。
ぼくたちはまた弾いた。
引き戸の向こうから、声がした。
「どうだ?」