腐れ縁
「ミキ、ありがとうね」
校門を出てすぐ、わたしは言った。
「さっき、努力家って言ってくれたの。恥ずかしかったけど、嬉しかった」
「まぁ、腐れ縁だから任せとけ!」
ミキは鞄の肩紐を持ち直して、少し胸を張った。
「奏のことなら何でも知ってるんだぞ〜」
「イヤー! ストーカーじゃないんだから!」
ケラケラと笑い声が上がって、それがアスファルトの熱気の中にしばらく溶けていった。
蝉の声が遠くから続いている。もうすぐ夏休みだ。
少し歩いたところで、わたしはぽつりと言った。
「将来のことなんて、今決められないよね?」
「うん」
ミキがあっさりと答えた。
「そんな遠い先のことなんて……なのに、みんな当たり前みたいに話すじゃん。やりたいこと、って」
ミキはしばらく黙って歩いていた。
「だからお父さんも、背中押してくれたんじゃない?」
わたしは少し顔を上げた。
「成績優秀で、生徒会副会長で。周りから見たらできすぎてるかもだけど」
ミキが前を向いたまま続けた。
「昔から知ってる身からすると、頑張りすぎじゃない?って思うよ」
「え?」
「ある程度決まってるんだし。大学行ったら、やりたいことに繋がるかもしれないじゃん」
ミキが振り向いた。
「だから一緒に行こう? ケンジさんの店!」
わたしは少し間があってから、「うん」と言った。
ミキはそれだけで満足そうに、また前を向いて歩き出した。
夏の光が二人の影を長く引き延ばしている。もうすぐ夏休みだ。
