Pretty Little Lie
ヒロの部屋に3人が集まった。
「One Horse Townって曲があるんだよ」
ユウジが口を開いた。あの日の駐車場で「3日以内にそれぞれ調べてくる」と決めていた。今日がその日だった。
「それな!」タクヤが言った。「俺も迷ったんだよ。Good One Comin Onって曲もかっこよくて」
「ヒロは?」ユウジが聞いてきた。
「うん……Pretty Little Lieって曲かな」
「3人とも違うな」タクヤが腕を組んだ。「どうする?」
「もう一回聞いてみようよ」
ぼくはスマホを出した。
3曲を順番に流した。3人でギターを膝に乗せたり、床に座ったり、立ったりしながら聞いた。
「どれもかっこいいよな」タクヤが言った。「3人でできたらどれでもいいよ」
「ヒロが言ってた曲がいいんじゃないか」ユウジがゆっくり言った。「テンポもちょうどいいし、爽やかな感じがする」
「そうだな」タクヤも頷いた。「初めての曲だし、こんな感じかも」
なんか、恥ずかしかった。
「本当にいいの?」
「いいに決まってんじゃん!」タクヤが笑った。「俺たちで聞いて決めたんだから」
「順番にやっていけばいいんだよ」ユウジが言った。「だんだん増やしていこうぜ」
ぼくも嬉しかった。二人も楽しそうだった。
「じゃあ、チューニングしよう」
照れ隠しみたいに言って、ギターを抱えた。二人もケースからギターを出してチューニングを始める。
メモを見ながらそれぞれ練習していたら、気がついたらお昼を過ぎていた。
「ヒロー?」
ドアの向こうからお姉ちゃんの声がした。
「なぁに?」
「お昼食べたの?」
「まだ!」
「お母さんが3人分用意してくれてるから取りにおいで。もう2時過ぎてるぞ〜」
「はーい」
「やべ〜」タクヤがスマホを見ながら言った。「時間の感覚なくなってた」
「お父さんに譜面作ってもらうから、曲の練習は後だね」ぼくは言った。
「ヒロのお父さんすごいよな」タクヤが言った。「譜面まで作れるなんて」
「ほんとに、いてくれてよかったよ」ユウジも言った。
なんかちょっと自慢げな気持ちになったけど、それは黙っておいた。
「お昼、取りにいこう」
3人でキッチンまで降りていった。
お姉ちゃんがアイスを食べていた。
「あんたたちずっと弾いてたの?」
「こんにちは」
二人がそろって言った。
「うん」ぼくは答えた。
「パパもギター弾き始めるとずっとやってるもんね。楽しいんだね」
「覚えることがたくさんで、まだ楽しめてるかどうか……」
ユウジが少し控えめに答えた。いつもと声のトーンが違う。意外と女性に弱いのかな、と思ったけど黙っていた。
「そういえば」お姉ちゃんが言った。「パパ今日、ギター教えに行くって言ってたよ。ケンジさんのところ。初日だから緊張してるかもしれないなって。新しく来る子らしいよ?」
「あ!」タクヤが言った。「先輩たちじゃない? あの日一緒だった人たち。ミキさんとカナデさん、だっけ?」
「よく名前覚えてるな」ユウジがニヤッとした。
「え〜、気になる人いるの〜」お姉ちゃんがからかった。
「やめてくださいよ、もう!」
4人で笑った。
実はぼくも、名前は覚えていた。奏さん、という名前を。なんとなく、だけど。